2025年7月の参院選が近づく中、各党の動きが活発化しています。そんな中、6月25日に前首相・岸田文雄氏が埼玉県さいたま市で行った講演が注目を集めています。
岸田氏は講演で、「与党が過半数を割れば、ますます政治が決められない時代になる」と述べ、今回の選挙が国政の安定にとって極めて重要であるという認識を強調しました。本記事では、この発言の背景、意味、そして今後の政治情勢への影響について詳しく見ていきます。
1. 発言の概要:岸田前首相が警鐘を鳴らした「政治の停滞」

出典 mainichi.jp
2025年6月25日、岸田文雄前首相は、自民党主催の講演会で演説し、次のように語りました。
「今回の参議院選挙で与党が過半数を割るような事態になれば、国会運営はますます困難を極め、物事が前に進まない政治になる」
この発言は、与党・自民党にとって今回の選挙が「政権の安定」そのものを問われるものであり、万が一過半数割れとなれば、「ねじれ国会」によって法案の成立が困難になり、政権が不安定化するという懸念を示したものです。
2. 「決められない政治」とは何か?~過去の“ねじれ国会”の記憶~

岸田氏が危惧する「決められない政治」とは、野党が参議院で多数を占め、法案審議がスムーズにいかなくなる状況を指します。日本の議会制民主主義では、衆議院が優越する場面はあるものの、予算案や条約、重要法案などの多くは衆参両院の同意が必要です。
過去にも2007年~2013年にかけて「ねじれ国会」が続き、与党が衆院で多数を握っていても、参院で否決されることで政策実行が難航したケースが多発しました。特に2010年の民主党政権時代には、政権の求心力低下が顕著となり、「決められない政治」が世論の支持を失う要因となりました。
岸田氏の発言は、まさにこの記憶を呼び起こし、有権者に「安定のためには与党を支持すべきだ」と訴える戦略とも言えます。
3. なぜこのタイミングで岸田氏が動いたのか?
岸田前首相は現在、石破茂政権の下で表立ったポストには就いていませんが、自民党内ではなお影響力を残しています。そんな岸田氏がこのタイミングで演説に登場した背景には、自民党内での“危機感”があると見られています。
参院選の情勢調査によれば、自民党・公明党の連立与党は過半数ギリギリを維持している状態。そこに日本維新の会、国民民主党、立憲民主党などが支持を伸ばせば、一気に「ねじれ」が生じる可能性が高まります。
岸田氏は、石破政権の行方以上に、自民党という政党の安定的存続のために、「与党多数の確保」の必要性を訴えたのだといえます。
4. 世論はどう反応しているのか?SNSと街頭インタビューの声
SNSやメディアでの反応を見ると、岸田氏の発言に対する評価は割れています。
【賛成派の意見】
- 「確かに、野党に政権を任せたらもっと混乱しそう」
- 「今の自民党にも不満はあるけど、政治の停滞は避けたい」
- 「経済対策や防衛政策など、進めるには安定した政権が必要」
【批判的な意見】
- 「自民党が今まで決めてきたことが庶民に優しくなかった」
- 「『決められる政治』って、国民の声を無視してないか?」
- 「過半数を取らせないことで、むしろバランスが取れる」
また、街頭インタビューでは、20〜30代の若年層からは以下のような声も聞かれました。
「選挙には行くつもりだけど、自民党が勝ち続けてるのが逆に危険だと思う」(28歳・男性)
「与党が強すぎると、一般の声が届かない気がする」(24歳・女性)
つまり、「安定」を求める層と、「変化」や「健全な対立」を重視する層が拮抗しているのが今の世論状況です。
5. 今回の参院選のカギ:与党の議席数と“中間層”の動き
今回の参議院選挙では、以下の点が焦点となっています。
● 与党(自民・公明)の議席数:63議席以上で過半数維持
選挙区と比例を合わせた全体で125議席が改選対象となる中、与党が63議席以上を獲得できなければ「ねじれ国会」が生まれることになります。
● 中道政党(維新・国民民主)の動向
維新や国民民主は、保守層の受け皿として期待されており、与野党どちらに寄るかによって今後の国会運営に大きな影響を及ぼします。
● 若年層・無党派層の投票行動
石破政権の登場や物価高、雇用不安などを背景に、若者や無党派層の票の行方が注目されています。特に都市部では、自民支持が弱まる傾向が見られます。
6. 石破政権の評価と自民党の選挙戦略

石破茂首相は、「聴く力」と「説明責任」を掲げて支持を集めましたが、内閣発足から半年で支持率は伸び悩み、政策の実行力を問う声も出ています。自民党としては、「石破政権はまだ本領を発揮していない」とし、選挙では「経験豊かな党として支えてほしい」と訴える方針です。
一方で、野党は「岸田政権の負の遺産」を強調し、消費増税議論や少子化対策の不十分さを批判しています。
7. 結論:岸田氏の発言は「選挙の地ならし」
岸田文雄前首相の「与党が過半数を割れば政治が決められない」という発言は、表面的には「安定した政治」の重要性を訴えるものでしたが、実際には「危機感の演出」とも捉えられます。
政権交代は起きなくとも、「参院で与党が負ければ国会は機能不全になるぞ」という“脅し”に近いロジックを含んでおり、有権者に「現状維持が最善」と思わせる政治的アピールとも言えます。
2025年の参院選は、「決められる政治」を継続するか、「変化と対立のある政治」を選ぶかを問われる大きな分岐点になりそうです。
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